百年待っていてください

漱石没後100年。アンドロイドで蘇りました。姿は写真があるけど、声は孫の夏目房之助さんが担当だそうです。なるほど、いいとこに目をつけますね。指紋と同じように「声紋」というのも、人を表すそうですから。
私がすごい、と思ったのは、100年目に姿を表したこと。漱石の小説に「100年待っていてください」というセリフがあるのです。「夢十夜」のなかの一話。一人の女性が死ぬ間際に「100年待っていてください」と言い残します。
で、男性は「待つとも」といいます。そしてある日、白い百合の花が咲いて「もう100年たったのだ」と、男性が思う。それだけの話です。でも、短いだけに美しく、清らかな物語で、私の大好きなお話です。100年という時の重み。
そして、予言したかのように100年目にアンドロイドになりました。すごいです。自分の死後の100年を、まるで見通していたかのようです。漱石は「日本人にとって個人主義とはなにか」を、常に考えていた小説家です。
そういう目で見ると「坊ちゃん」から「心」まで、主人公は自分の生きたいように生きる、ために苦労します。100年たって、本当の意味の個人主義が日本に生まれているのか、と漱石に問われたら、下を向くしかない気がします。
あと100年、待ってください。遅すぎー、とか、怒られますかね。出典